いよいよ技能実習制度・特定技能制度についての新制度「育成就労制度」、その概要に触れてみたいと思います。

技能実習制度とは

そもそも技能実習制度とは、我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度です。
技能実習法には、技能実習制度が、このような国際協力という制度の趣旨・目的に反して、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保等として使われることのないよう、基本理念として、技能実習は、
①技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならないこと、
②労働力の需給の調整の手段として行われてはならないこと
が定められています。

しかし一部では労働力の補填のために技能実習制度を利用するというのもあり、一部では問題になったりしました。(すべての事業者はそんなことは無いと思いますが)
そこでいろいろと問題が発生し、技能実習制度の改める時期に入りました。
そこで新たに有識者会議で議論され、「(仮称)育成就労制度」が新設される見込みです。

育成就労制度とは

現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、日本の社会の人手不足分野における人材確保と人材育成を目的とする新たな制度となります。
これまでの技能実習制度とは大きく異なる点が、「人材確保と人材育成」にあります。この制度とよく似た在留資格が特定技能です。後述しますがこの特定技能とは大きくかかわりがでてきます。
まだ提言がされた段階なので、ここから本格的に提言をもとに制度設計されると思われます。

見直しに当たっての三つの視点

見直しの四つの方向性も示されました。

①人材確保と人材育成へ移行
②人材確保の観点から外国人に日本を選んでもらえるように人材育成を行い特定技能外国人に移行する。
③一定要件で転籍OK
④共生社会の実現

この四つの方向性が示され、今後、法改正が確定した際もこの方向性をもとにいろいろと修正される見込みです。
今までは例外的に転籍だったのが、一定要件を満たせば転籍がOKになるのは、今までとは大きく違う点となります。
今の監理団体許可とは別に新たな監理団体許可申請が必要になると提言されています。その際の要件は、今以上に厳格化されたものになる予定です。
「共生社会」と明言されているので、日本も外国人人材をより多く向かい入れてより国際的社会の突入を示唆しているように感じます。

配慮される点

現在の制度をいきなり変更すると利用者に迷惑がかかる観点から以下の点を配慮するとされています。
今までの制度を利用している利用者がいきなり制度が変わると大きな混乱を招いてしまう恐れから、きめ細やかなフォローが必要になると思います。その点、留意事項で配慮される予定のようです。また速報が出次第、まとめようと思います。

「育成就労制度」と「技能実習制度」とで
今までと異なる大きな点4つ

●新たな制度「育成就労制度」を創設

今までの技能実習制度が将来的に解消されて新たな制度に統一される見込み→育成就労制度(人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設。)
基本今までは、技能実習1号、2号、3号と年数をかけて技術の習得を図っていたと思います、それを育成就労制度では基本的に3年間の育成期間で、特定技能1号の水準の人材に育成することを前提で運用していく提案をされています。

現行制度(技能実習制度)を発展的に解消して新たな制度の創設を完全に示唆しています。しかも3年間で特定技能水準にもっていくといっているので、今までより、より濃厚な計画が求められると考えらます。
新たな制度の名前は、「育成就労制度」という案がでたようで、おおむね反対がなかったようです。このままこの名前が技能実習制度に代わる制度の名前になりそうです。
よりシンプルになっていく予定です。
人材育成、人材確保を直接的な理由にして、しかも特定技能に移行しても、その技術を祖国に戻って活用することもできるような設計のようです。
一方、家族帯同には厳しい見方があるようです。しかし、新たな制度(3年)から特定技能1号(5年)の間の最長8年間の在留中に家族ができたり、子が生まれたりすることがあり、そのような場合には、人権への配慮の観点から柔軟な対応が必要であるとの意見もあったようです。

●「育成就労制度」の受入れ対象分野の変更

技能実習制度の職種等の単純に引き継ぐのではなく新たに設定をするようです。受け入れ分野も、技能実習制度との違いを踏まえたうえで、新たに設定するべきだという考えのもと、提言されていると思われます。今後は、より実態に合った職種が決まっていくのではないかと予測します。どこまでいっても、今より厳しく厳格化していくよう。外国人の管理体制の見直しも必要と考えられます。
受入れ機関は、技能修得状況等を評価するため、外国人に対して、
1:育成開始から1年経過時までに、技能検定試験基礎級等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)
2:育成終了時までに、技能検定試験3級等又は特定技能1号評価試験及び及び日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)
をそれぞれ受験する必要があるようです。

●「育成就労制度」では転籍が一定条件でOK

「やむを得ない事情がある場合」と「本人の意向による」の2つの転籍の方法があるようです。やむを得ない事情があるときは、もちろん転籍は認めるべきであり、手続きも柔軟化していく傾向にありそうです。職場でのハラスメント、暴力などの個別事案は事情に応じて立証手段を簡素化していくような流れになりそうですね。提言段階では簡単な証明(疎明でいいかもしれません・・・)でいいように提言されていますので、ありもしない事実を言って転籍を楽にするような制度の悪用も考えられました。そうなると企業側はどのようなペナルティを負うのか、、、。転籍前の初期費用負担では、お金の問題になりますので、問題が大きくなるかもしれません。そこも合理的な基準を設けたうえで一定の範囲で初期費用等を転籍先に負担させるべき意見が出たようです。これがどのように制度化されるのか、追っていく必要があります。

●「育成就労制度」の監理・支援・保護について

技能実習機構の監督指導・支援保護機能や労働基準監督署・地方出入国在留管理局との連携等を強化され、かつ監理団体の許可要件等厳格化が予定されています。
監理団体許可には外部監視の強化などで新たな制度に対しての監理団体許認可が厳格化される予定。監理団体の要件も厳格化していく流れのようです。
特定技能外国人の補助も機構が担っていくような感じになるように提言されています。
なお更に、労働基準監督署等と連携をとって労働法違反は厳格に対応していくまで提言されています。より厳しくなるのは目に見えて明らかと思います。監理団体に関しては新たに許認可を取得する必要があるようです。
制度施行に伴い、新たに許可を受けるべきものと提言されています。「その際、 監理団体に対しては、新たな許可要件にのっとり厳格に審査を行い、機能が十分に果たせない監理団体は許可しないものとする。」とまで提言されていますので、かなり厳しい要件のようです。現行の監理団体も新たな制度に突入した場合は、今の監理団体許可とは別に許認可が必要になりそうです。さらに、許可基準も厳格化していくようで、機能が十分に果たせない監理団体は許可されなくなるということも言われていますので、新しい制度への自社の対応が必須に求められてくるかと思います。

まとめ

その他にも制度が大きく変わるようです。新たな制度が導入されても、運用状況に関しては、常に検証して見直しが図られていくようです。
今回の件で、今まで通りの自社の運用はできなくなる可能性は大きくあります。必要に応じて自社の対応を変更していくことが求められます。
申請や報告、監査、などこれまで以上に深く求められるでしょう。